『ふるさとの山に向かいて』(佐藤明廣くんから)
『ふるさとの山に向かいて』
私は昭和五十二年に東京の大学を卒業して県内に本店を置く地方銀行
に就職した。職業柄、転勤が多く、米沢を振り出しに北は東根から南
は東京まで、概ね山形新幹線沿線で勤務した。現在は縁あって飯豊町
の建設会社で役員として働いている。
平日は長井市の自宅から会社に通い、週末になると家族のいる山形に戻るという単身赴任の生活を四年余り続けている。
月曜日の早朝、山形から長井方面に向かうわけだが国道348号の南陽市と白鷹町の境にある白鷹トンネルを抜けたあたりから、朝日連
峰の主峰大朝日岳が見に飛び込んでくる。朝日連峰は深田久弥の「日本百名山」のひとつに数えられ飯豊連峰と共に別名「東北アルプス」
とも言われる名峰である。春から初夏にかけても雪が残り、緑が映える夏を迎える。紅葉で赤く染まる秋、豪雪に覆われる冬と季節の
息吹を感じる。
さらに南下して白鷹町から長井市に差し掛かると大朝日岳は手前の山の陰に隠れて見えなくなる。手前の山が葉山である。葉山は長井市
の西側に広がりやさしく見えるが、長井市白兎の登山口から登ってみると以外に急坂である。
さらに南に行くと長井市市街地から見えない祝瓶山が姿を現す。祝瓶山は三角錐のような山容から「東北のマッターホルン」と呼ばれ
て最近注目されている。標高は1500メートルに満たないが独立峰であり朝日連峰の主峰大朝日岳に劣らない存在感がある。
私は村山地方と置賜地方を行き来しているが、このようなふるさとの山々を見ると安堵する。これらの名峰が原始景観を残しながら、後世に伝えられることを願わずにはいられない。