『同級会に寄せて』(渋谷朝子さんから)

『同級会に寄せて』

 先日の事、私は近くのスーパーの一角で一点を見つめて立ち止まっていた。後ろから「朝ちゃん!」と声がして振り向くと、声の主は同級生で同じ吹奏楽部だったセッちゃん。

 私は開口一番に「あ、セッちゃん!この○○そばの箱入りって安い?」と。値段を見てくれたセッちゃんは「もう少し安くなるよ」そして「そうだよねえ」と納得した私はふと我に返り「セッちゃん、お久しぶり!お変わりない?」と挨拶をした。それから二言三言の会話をして「んじゃ、またね~」と、それぞれの買い物に戻った。

 セッちゃんとは同じ南陽市内に住んでいるとはいえ、スーパー等で偶然会うのは年に1回あるかないかである。後で考えると、 ○○そばが底値かどうかなんてどうでもよい事で、「セッちゃん、お久しぶり!お変わりない?」とういう挨拶がほんとうは先だったし話題のメインだったなあ、と反省する。

 でも、どうしていきなり そばの底値の話をしてしまったのか。

 あの時私の頭の中は、お互いに「~ちゃん」と呼んだ瞬間から、舞台はもうスーパーの一角ではなく、急いで部室に向かう体育館のギャラリー辺りへと飛んでいた。毎日登校し、次の日にはまたすぐ会えるから、今でもそのノリで「あ、セッちゃん~」そしてさりげなく「またね~」と言えたのかも知れない。

 同級生っていいなあ。何十年もの昔にすぐに飛んで行けるんだもの。

(セッちゃん、あの時はありがとう。後日 そばの箱入りを○○200円も安く買いました)

 

 ところで、今回の原稿依頼は「一瞬で何十年も昔に飛んで行けるのはよいのだが、その間私は何をやっていたんだろう」と振り返る機会にもなった。

 長井高校卒業後は洗足学園(音楽)大学の音楽教育科に進み、卒業。それ以来ずっと自宅でピアノを教えてきた。かれこれ46、7年になる。4人の子育てがようやく落ち着いた頃の40代後半からは、入団出来るのは65歳以上とういう高齢者による女声合唱団でピアノを弾いている。また、子供たちを連れながら読み聞かせのボランティアサークルに参加し、時折保育園でなどで演じる物語や人形劇に音楽を付けてきた。これもかれこれ30年。
 いつの間にか、どれをとっても長い長い年月に亘ることとなった。自分から積極的に続けてきたというよりは、いつも誰かに励まされ支えてもらいながらなんとか続けてこれたと、その時々の出会いに思いを馳せている。
 そんな中、読み聞かせサークルのご縁で10年ほど前から私の稚作が「コインランドリーるんるん」のCM曲としてYBCラジオから流れるようになった。「お洗濯が楽しくなるような曲を」とういう依頼で出来た10数秒の曲である。(内、10秒くらいはセリフと被っているけど。)長井高校を卒業して50年の今、お世話になった先生方には心からの感謝として、また同級生の皆様にはご無沙汰のお詫びを混ぜながら「これからもますますお元気でね!」


 というエールとしてこの曲をお届けしたいと思う。
『るんるんるるんのおせんたく 』もしもこのフレーズがお耳に入った折には、ちょっとだ♪けニコッとしていただければ嬉しいです。
 同級会まであと少し。お会いできる方とはもちろん、欠席なさる方とも、残念ながら他界なさった方々ともみんな一緒の輪になって、泣いたり笑ったりしながらの楽しいひと時を過ごしたいと思っている。